―――――― あの日以来、マトが城の化け物の話をすることはなかった。 初めは少しだけ心配していたリネットだったが、次第にその心配は薄れ、終いには完全に頭の中から消えていた。 そんなある日――。 「お姉ちゃん」 いつものように目覚めたマトは、その足で真っ直ぐリネットの元へとやってきた。 「何?ちょっと今手が離せないから…」 そう言うリネットの手元では、朝食であろうスープがおいしそうにクツクツと沸騰している。