「勇気や度胸っていうのは、そんなことで試すものじゃないのよ」

「でもっ……!」

「さっ、早く食べちゃいましょ」



まだ納得していないのか、マトはリネットの服を掴んだままだ。



「マト」



そんな弟の手を優しく自分の服から離すと、リネットは再びマトの頭に手を置いた。



「お姉ちゃんは、マトに何かあったらと思って心配してるの。だから、あんまり危ないことしないで」



「ね」と言って優しく微笑んだリネットは、そのままマトの頭をなでる。



このとき、マトが大人しくなったことに安心していたリネットだったが、もしその目が見えていたら…、マトが未だに納得いかないといった表情を浮かべていたことに気づけたかも知れない――。