「随分無礼な女だな……」 衛兵に捕らえられて身動きがとれないでいる女の顎を掴んで無理やり上を向かせると、はき捨てるようにグラディスが呟いた。 自分に向けられるグラディスの漆黒の瞳に対して、女は再びその赤い唇を妖しく歪めた。 「……何がおかしい」 そんな女の態度が気に入らなかったのか、僅かだがグラディスの表情に苛立ちの色が浮かぶ。 広間にいる人間は皆、誰も言葉を発することもなく二人を見つめていた。