呪文ひとつで簡単に、とはいかない。

この扉はなかなか開きそうにない。

押しても引いても手応えのない扉を前にして、俺は途方に暮れている。



「どうしたらいいんだよ…」



自業自得、という四文字を頭の中から追いやって、とにかくこの状況をどうにかしようと俺はひたすら扉を叩く。



「開けてくれ~」



叫び声は虚しく響く。

周りに民家もなく、助けが訪れるとはとても思えない。



あとどれだけの時間を、こうして過ごすのだろう。

冬の冷たい北風が頬に吹きつける。

ほんの少し、窓を開けるぐらいしかできない自分が、惨めで仕方ない。



周囲をうろうろしながら、じりじりと時間は過ぎる。


次第に日は傾いていく。