「今のもう一回やって!」


もう何度目か知れない少女の要望に、マジシャンはいい加減苦い笑いを滲ませた。


それでも、少女の押しに負けて頷く。

黒いシルクハットを片手に見せる。



「いいかい?

ほら、見てごらん、中は空っぽだろう?」


こっくりと頷く少女を確認してマジシャンは続ける。


「よぉく見てなよ?

この帽子に、布を被せて……


1・2・3!!」



声に合わせてマジシャンが布を取ると、真っ白な羽が宙を舞った。



それは、幼い心に小さな感動を生んだ。




出会いはどこか、その記憶に似ていた。