「ノア、コーヒーを頼む。」

「かしこまりました。」

深々とお辞儀をして下がる姿は完璧な所作。

彼女の淹れるコーヒーもまた、文句のつけようもないほど美味い。


「……博士?」


コーヒーを手にしたまま飲む様子のない私に、不審そうにノアは尋ねた。

もう一度淹れなおそうか迷っているようだ。


「いや、なんでもない。

今日はメンテナンスの日だったな。

研究室に石丸くんを待たせている、時間になったら向かってくれ。」


「はい。留守の間、ご不便をおかけしますが……」


心配そうにしている彼女を無理矢理追いやって、溜め息をついた。




一ヶ月に一度、彼女をメンテナンスにやるのは私にとっては災難としかいいようながない。


彼女がいなければ、家の中のどこに何があるのかさえ、危うい。




…しかし。



彼女はNo.A(ノア)なのだ。