ふと見上げた空が遠かった。


通り過ぎた風が湿っていた。


取り囲む空気が、生温くあたしを包んでいた。





こんな夜には家に帰りたくなくて。


駅から、遠回りの道を選ぶ。


次の角を右に曲がって、大きな通りに出よう。


そう決めて歩みを進める。




車が後からどんどんあたしを追い越して行って。


いくつものライトを見送る。




そのうち、堪らなくなる。





どこまで行っても、この道にはすれ違う人はいなくて。


あたしは置いてけぼりにされていくだけ。


一人でいたいのか、一人ではいられないのか、分からなくなって。


胸のモヤモヤが濃くなって。



取り出したケータイだけど、誰にも繋げない。







ダレカ、アタシヲ、助ケテクダサイ…








言葉にできないうねりを、涙で流した。