「まったく…そういえばもう一人いたよ、鈍感人間が…

まあ、昔からそうだったけどね~」



謎めいた言葉に首を傾げると、先輩がにやりと笑う。



悪魔のようなその笑顔に寒気を感じつつ、俺は言った。


「どういう意味ですか?」


「相良さんは当時、文芸部に好きな人がいたんですよ、古谷くん?」


諭すようにそう言う先輩に、多少の殺意を覚えつつ俺は聞く。



「誰なんですか?それ」



たっぷりと間を持たせて、先輩は口を開いた。









「イニシャルは……N」