なんて軽い…

来月で三年目を迎えるはずが、こんな風に終わりを告げるなんて。




「なんだったんだろうな」


俺たちの三年は。


思わず、口に出していた。



「意味はあったわ」


彼女は困ったように笑って席を立った。


「少なくとも私には幸せな時間だった」




「……ありがとう」


ほかに言うべき言葉が見つからなかった。


「お幸せに」


そう言って彼女は去った。




「君の方こそ」



俺の言葉は静寂の中に吸い込まれる。


唐突過ぎて、怒りすら忘れてしまった。


実感の伴わない別れに、少しだけ真実味を持たせるのは、彼女の残した指輪だろうか…



俺は指輪を軽く弾いた。弧を描いて指輪は手の中に戻ってくる。


果てしないその円を見つめながら、俺は彼女の姿を思い出す。





初めてのデート、手に触れた瞬間、抱き締めた感触。


隣りにいる空気、助手席の寝顔、すべてを。