誰よりも側にいながら、誰よりもたやすく手で触れられる位置にいながら、自分のどうする事も出来ない少女、ほのか。


-この子の笑った顔が見てみたい。-


そんなささやかな願いも叶わぬまま、もどかしい月日が過ぎていった。
…そんな憂鬱な季節が幾つか過ぎて、あれは丁度ケイが十五歳、ほのかが十四歳の頃であったであろうか。ある日を境に、ケイはほのかと一緒にいる時間が、急激に減った。
と言うのも、ほのかが昼夜問わず、ケイに内緒で知らぬ間に、姿を消す事が多くなったからである。
当然、ほのかに惚れているケイとしては、それがとても、気になった。
ある日の夜、ケイはその事について尋ねるために、ほのかの部屋を訪れた。しかし、中には入れてもらえず、ドア越しに会話が出来ただけであった。


「…聞いてどうするの、お義兄ちゃん。」
「そ、それは…」


結局、その日は何も解決しないまま、もやもやした気持ちを抱えたまま、ケイは床に就いた。