そう言うわけだから、当然ここまで大きくしてきた夕霧家を繁栄させていかなければならない。
後継ぎとしては、通常ならばケイが選ばれるはずなのであるが、義父の賢は、ケイではなく新たに後継ぎとしての養子をとることにしていた。
これは何も、ケイを嫌っての事ではなく、むしろケイを思いやっての事であった。
そもそも、ケイは元々表情の無い、人形の様な子ではなかった。自分をも巻き込んでの自動車事故での両親の死、そしてケイを愛した少女ほのかの死。まだ十六歳のケイの、繊細な心には、既に大切な人の命が刻まれているのだった。しかも、そのいずれの命にも、サヨナラを言うことは出来なかった。
そして、ケイの両親の死はともかく、ほのかを死なせ、ケイをこの様な人形の様な子にしてしまったのは、自分のせいだと賢は思っていた。


-あの時、この子をあの娘に会わせさえしなければ…-