…ケイには、過去十六年の間生きてきた中で、思い出らしい思い出は、無い。と言うのも、彼は四歳の頃から十歳の頃まで、病院のベッドの上で過ごしていたからである。
…ひどく雨が降り続く晩の事だった。大型トラックがカーブを曲がりきれずスリップし、当時まだ四歳のケイとその両親を乗せた乗用車が正面衝突をした。
彼の両親は即死、彼もまた、一命は取り留めたものの、長い間、意識が戻る事がなかった。
しかし、ケイが丁度十歳を迎えた日、突然、ケイは意識を取り戻した。それから彼は、彼の入院費を払い続けていた、ケイの叔父(ケイの母親の兄)に引き取られ育てられた…


…更に言えば、その十歳から十五歳、この頃は、他のティーンエイジと同じ生活を送っていたはずなのだが、実は、このころの記憶も曖昧であった。それについては今度は、ケイの首から下げられている、ロケットの中の写真にある少女、「ほのか」の死が関係していた。