「…あ~あ。とうとう私の初恋、終わっちゃった。」
そう言いながら真琴は、窓辺で一人、クスッと笑いながら、丁度梅雨明け宣言がなされたその日の空を眺めていた。
「彼が噂のロマンス・カッター『夕霧ケイ』君、か…何にしても、変わった子だったわね。」


その頃、ある街角で、ケイは空を見つめながら独り、物思いにふけっていた。


-ねえ、ほのか。真琴さんって、本当に優しい人なんだよ。僕の左腕の包帯の事、初めから尋ねも見ようともしなかった。これが、心の傷を表すものだって、直感的に気づいていたんだね、きっと…真琴さんは、一番僕の記憶の中にある、ほのかに近いものが感じられたよ。僕の左腕もそう言っている。ところで、それと同時に、今回新たな疑問がわいてきたんだ…-



-僕は果たして、本当に恋をしたことがなかったんだろうか-


梅雨が明け、光り輝く眩しい季節が始まろうとしている…