―雨降る夜に恋をして、雨が止む朝には恋にやぶれ。いつしかこれがワタシの日課となり…―


―作り続ける逆さ照る照る坊主も、千羽鶴など比較にもならないほど部屋に飾られ…―


―雨の降る日を待ちわびない日は無い。―


…暗くじめじめとした毎日が続いている。巷の人々も、べとべとした汗をハンカチで拭いながら、梅雨明け宣言を今か今かと待ちわびている。
しかし、やはりどこにも例外はいるもので、ある所に、この雨降りの季節が、もうすぐ終わってしまう事をよしとしない、そんな少女がいた。その少女は、名を飯田真琴といった。
しとしとと、雨の降る弧麻知神社の境内。丁度、賽銭箱の横の階段に腰をおろしている真琴は、濡れた長い黒髪をタオルで拭きながら、薄く霧がかった辺りの様子を眺めていた。