…それは触れれば、たちまち散ってしまいそうな、日陰に咲く、美しくもか弱い一輪の花。彼を何かに形容するならば、その様に例えられようか。
ただ、それだけの光景であれば、この灰色の街にはせめて、色気という物があったのだと麗華も心が救われたであろう。しかし、そこには要らないおまけがついていた。


ーその少年を、三人組の男が取り囲んでいるー


麗華には、遠目でもそれが恐喝だとすぐに分かった。そのすぐ側を歩く人々は、そんな様子を気にもかけない様だ。綺麗な花さえも、ただ静かに咲くことを許さない。これが、この街の姿なのかと、腹立たしく思えた。そして麗華は、迷う事なく、その光景に向かって猛ダッシュした…


「…お金は、持ってません。」
「あぁ?しらばっくれてんじゃねえよてめえ!女みてーな顔しやがって!」
「さっさと出しちゃった方が、身の為だよん。」
「しつけーなあ。超~っ痛い目にあわないと分からない…かあっ!」