今であればまだ、少なくとも過去に「ほのか」と言う「とある一人の少女」が、あなたを愛していたと言う事実だけは残せると思います。
その違和感-あなたの側にいつもいた私が、急にいなくなるという-が、あなたの中で、私とあなたとの思い出が急速に失われていく事へのブレーキとなる事でしょうから。
つまりは、常にその事を気にかける様になるでしょうから。


私は常に、人とは、無い物ねだりの生き物だと思っていますし、そう信じています。
だから、きっといつの日か、その違和感を埋めるため、あなたは旅出ってくれると信じています…


…ここまでが、事件後に刑事に提出される事となった、事件に関わる重要書類であるほのかの遺書。そして特別に遺族であり、手紙の中にある「あなた」にあたるケイに、刑事から手渡された遺書のコピー。全部で二枚あった。
…その遺書は、文章の区切れ目からして、それを目にした皆からすれば当然、手紙の締めの部分だと思われたし、あの事件の騒ぎの中、誰も疑う余地もなかった。