高村も磯野も俺と同じく栄養が付くものを食べて、また一仕事しようという気になったようだ。


「……確かあのマンションで最近、人が死んだよな」


「ああ」


 高村が呟いたので、隣にいた磯野が頷く。


 この街の中で、死人が出たようなのだ。


 別に首都圏の都市部で、東京から離れているとは言っても、人が一人死んだことが噂になるような感じじゃないのだが……。


 ところが、高村が眉(まゆ)を顰(ひそ)め、


「確か、死体に刃物か何かが突き刺さってたよな?」


 と言った。


 一応事件性があるので、警察官が臨場しているはずだ。


 高村も磯野も食事が終わってからその話ばかりしている。


 俺はタバコの箱とジッポを取り出し、吸おうとした。