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 俺はその夜、里夏と話をしながら、徐々に精神的な葛藤を取り除いていった。


 確かに今村武蔵介と綾田伊予丞の霊と、空を切る刀の音、それに赤い血の混じった水溜りが出来ていたのは俺にも分かっている。


 ただ、水と塩を供えた瞬間、霊は消え去った。


 俺は何が何かよく分からなかったのだが、心霊現象を生で体感できたのだけは認識出来ていたし、実際霊の怖さを改めて悟ったのだ。


 里夏の「あんまり騒がないのが一番いい」という言葉が脳裏をよぎる。


 俺自身、彼女のアドバイスはかなりの程度参考になっていた。


 それに同じ物件の中で、背筋も凍るような霊が出没し続けている以上、それを貸した不動産屋にも当然ながら責任が生じてくる。


 俺は日付が一つ変わり、深夜の一時ぐらいまで電話で話をした後、疲れが来たのか、ケータイを切った。


 そして充電器に差し込む。

 
 そのままベッドに横になった。