そして案の定、彼女は出てくれた。


「もしもし。俺。和義」


 ――ああ、お疲れ様。何か用?


「今日、自宅に帰り着いたらエライことになっちゃっててさ」


 ――エラいこと?……何があったの?


 俺は今日経験した心霊体験を言葉を選ぶようにして、里夏に伝える。


 彼女はじっと聞いていたのだが、やがて、


 ――考え過ぎだと思うけどね。多分、和義が昼間お仕事で疲れてるから。


 と言った。


「だといいんだけど、確かに俺は武者の霊と血の水をこの目で見たんだ」


 ――まあ、あんまり騒がないのが一番いいと思うわ。


 里夏は落ち着いた口調で言う。


 これが賢明な考え方なのだなと、俺自身、少しずつ思い始めていたのだが……。