死霊むせび泣く声

 身に危険が及ぶことも十分考えられるのだから……。


 霊媒師は小津原(おづはら)織枝(おりえ)という、白髪交じりの七十代ぐらいの老婆だった。


 上下とも暑苦しそうな格好をして、手には数珠(じゅず)などを持ち、霊を鎮めるために体を張る仕事をしているようだ。


 俺のマンションに来て早々、小津原が、


「……何か強い怨念を感じますね。尋常じゃありません」


 と呟いた。


 俺が、


「除霊お願いします」


 と言うと、小津原が持っていた数珠を握り締め、呪文のようなものを唱え出す。


 俺は黙って聞いていた。


「ナンダーラ、ナンダーラ、ナンダーラ……」


 小津原の呪文が続く。