死霊むせび泣く声

 顔が血まみれで、鎧兜(よろいかぶと)には刀が突き刺さっている。


「キャー」


 里夏が思わず叫び、動転した状態になった。


 俺が、


「お、お前……だ、誰だ?」


 と問うと、霊が次の瞬間、無言のままスゥーと消え去っていく。


 おそらく無念のままこの世で死んだ霊魂(れいこん)が、成仏できずに来世から現世に出てきて浮遊(ふゆう)しているのだろう。


“まさかこれが俺の住むマンションに取り付いてる霊なのかな……?”


 俺は訝(いぶか)しげに思いながら、気持ちを切り替えてエンジンを掛け、ハンドルを握る。


 アクセルを踏み込んで、発進した。


 俺も里夏も正直なところ、怯えきっている。


 やはり不動産屋の岡村はウソをついたのか……?