死霊むせび泣く声

 俺たちは口付け合って、愛を口移しする。


 夏の夜特有の蒸し暑さが漂い始めた。


 俺も里夏も車を停めていた駐車場へと向かう。


 車のドアロックを解除して、俺が運転席に座り込むと、里夏が一瞬凍り付いたような顔をした。


「どうしたの?」


「手……手首」


「手首がどうかしたのか?」


「足元にあるわ」


 俺が言われて足元を見ると、そこには刀か何かで切られたと思われる武者の手首が転がっていた。


「わっ!」


 俺は一瞬翻(ひるがえ)り、その手首を掴み取って車外へポーンと放り投げる。


 すると次の瞬間、後部座席に下半身のない霊が座っていた。