死霊むせび泣く声

 冷や汗というやつである。


 俺は街中にある不動産屋まで、十分ほど車を運転した。


 そして付属の駐車場に停め、店へと歩き出す。


「こんにちは」


「ああ、大倉さん。お久しぶり」


 不動産屋の主任である岡村が声を掛けてきた。


「何かご用件?」


「ええ。実は僕の住んでるマンションに霊か何かがあると思いましてね」


「霊って、確かお部屋はコーポ瀬戸川でしょう?」


「そうです。あそこの二〇三号室です」


「あのお部屋、別に何もないですよ」


 岡村が平気な顔をしている。


 俺が踏み込んで訊いてみた。