それは里夏も同じだろうと思われた。


「今日今から抜き打ちで不動産屋に行くよ」


「アポ取らなくていいの?」


「ああ。大抵、あの手の店は年中営業してるしな」


 俺が頷き、彼女を助手席に乗せ、エンジンが掛かったところで運転する。


 里夏は蒸し暑さを感じているようで、肌にはジンワリと汗が浮き出ていた。


 俺はハンドルを握り、車を出す。


 マンションの駐車場から車を発進させ、俺たちは外出した。


 里夏が不意に、


「和義、この街に実は都市伝説があるらしいの」


 と言って、眠っていた恐怖心を煽り立てる。


「都市伝説?」


「ええ。落武者の霊が現れるらしいの」