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 俺は外出時に持って歩く財布やケータイなど所定の荷物を見に付け、1.5リットル入りのペットボトルに水を丸々一杯入れて、部屋出入り口に向け歩き出す。


 里夏はまだ水道を使うことに抵抗を覚えているようだった。


 彼女が見たらしい赤黒い水というのは一体何なのか……?


 俺は里夏が間違ったものを見ただけで、気のせいだろうとも思っていたが、やはりこの物件には何かがある。


 不動産屋は今日も開いていて、営業日だ。


 俺は外の駐車場に停まっている車に乗り込んで、キーをキーホールに差し込み、エンジンを掛けた。


 ブーンという音がして、しばらくアイドリング状態にする。


 蒸し暑い。


 まだ六月だというのにこれだけの暑さがあるのだから、七月、八月などは一体どうなるのか……?


 俺にはまるで想像がつかない。