関東地方は依然としてこの蒸し暑さだったのだが……。


 髭を剃っていたし、軽くスタイリングムースを付けて整髪したりもしていたから、身支度を整え終わった。


 俺は穿いていた短パンのポケットに財布とケータイを入れ、普段滅多に使うことのないリュックに運転免許証などを詰め込む。


 そして里夏がメイクし終えたのを見計らって、


「行こう」


 と言った。


「待って。ちょっと冷たいお水飲むから」


 彼女がそう言い、キッチンの蛇口を捻ると、刹那(せつな)世にも恐ろしいものが流れ出てきた。


 赤黒い水だ。


「キャー」


 里夏が一瞬叫び声を上げて、俺に、


「ちょ、ちょっと……この水何よ?」