FIN
 俺は歩道を歩きながら、


「絶対にあの霊が殺しに来る。今夜は君のところに泊めてくれないか?」


 と言った。


 半ば懇願の意味を込めて、だ。


 だが、里夏が、


「あたしのマンションにも霊が来る可能性はゼロじゃないわ」


 と言い、引き攣(つ)った顔をする。


「怖いんだ。助けてくれ」


「でも、どうしようもないわ。あたしに頼んだって、霊魂が鎮まるわけじゃないし」


「じゃあ、俺は死ななきゃいけないのか?」


「だから、そんなことないって。ね?落ち着いて考えて」


 里夏がそう言い、俺のマンションの方向へと歩き続ける。