何か鎧か甲冑が鳴るような音が聞こえる。


 それも遠くではなく、すぐ近くで。


“気のせいかな?”


 俺はそう思い、コーヒーを飲み続けた。


 デザートを食べ終わり、俺も里夏も立ち上がって、これから部屋へと向かう。


 一応俺は部屋に里夏を上げるときのために、普段から掃除はしておいた。


 俺たちは幾分涼しげな夏の夜に、あの怨霊たちが殺しに来るなど、およそ想像もつかなかったのだ。


 それだけあの今村武蔵介と綾田伊予丞の霊魂は穏(おだ)やかならず、俺たちを極限状態へと追いやるつもりでいる。


 そう、死という究極の選択肢にまで。


 俺はあの部屋に帰る以上、それからは逃れられなかった。


 次に霊の怒りが降りかかってくるのは、何を隠そう俺たちだった。


 しかも全く無関係の里夏まで。