体の中が冷えてきた。


「フゥー」


 大きく息をつき、俺は出勤の準備をし始める。


 盆休みが終われば、いくらか涼しくなるだろう。


 俺はリビングへと戻り、部屋干ししていたワイシャツに腕を通す。


 相変わらず上下ともスーツで、ネクタイを締めている。


 ちゃんと毎日仕事が用意されているので、いくら企画書を打つ単調なものとはいえ、俺は本気になるのだ。


 里夏は今日も出勤してくる。


 俺は別に彼女まで霊の恐怖に巻き込みたくなかった。


 一連の現象は単なる都市伝説の一環に過ぎない。


 俺自身、つい最近まで本気で引越しを考えていたのだが、別にここに住み続けてもいいかなと心変わりしている。


 下手に動いても疲れるだけで、何も得るものがないのだし。