こんな四百年以上前の戦国時代の残党のような連中が、この二十一世紀という時代にまだ霊魂として出現してくると思うと、怖気(おぞけ)が振るう。


 背後で赤黒い水が流れ出続けている。


 確かにこのマンションで人が亡くなっているのは事実だし、それに関しては否定しようがない。


 ただ、俺は冷静に考えてみるに、悪の元凶はやはり目の前にいる霊だと思った。


 心身ともに参っているのだが、俺自身、頭を冷静にして、事実関係を整理するつもりでいる。


 それにこの霊たちもしつこくこの場所に棲み続けることはなく、いずれは退散するだろうと思われた。


 まだ暑いのだが、これから先、お盆明けぐらいになれば、少しは涼しくなるだろう。


 俺は柳に風といった感じで、霊たちを無視し続ける。


 すると今村と綾田の霊は自然と消えていった。


 俺が振り返って、出しっぱなしだった水を見ると、いつの間にか無色透明になっている。


 俺はアイスコーヒーを淹れて、氷を浮かべ、二杯立て続けに飲む。