死霊むせび泣く声

 つまり完全に油断していたのである。


 だが、思えるのは、つまらないことに気を取られるのは止めにしたいということだ。


 俺自身、その手の悩み事に関して深く考えることはあるのだが、あの物件から離れればそれが雲散霧消(うんさんむしょう)してしまうのを感じ取っていた。


 おまけに夏場で気温が変わりやすいので、頭痛がひどい。


 俺は元々頭痛持ちで、近くの薬局で痛み止めを買って飲んでいる。


 サラリーマンは忙しい分、そういった人が多い。


 俺も例外なしにその一人なのだった。


 自宅に辿り着くと、キーホールにキーを差し込んで、クルッと右回しする。


 ガチャリという音が立ってドアが開いた。


 俺は電気を付けて、出入り口に隣接しているキッチンからリビングへと向かう。


 ワイシャツを脱ぎ、風呂場に入る前の場所に置いてある洗濯物入れに入れた。


 汗が出ていて、自分でも汗臭いと分かる。