Faylay~しあわせの魔法

「……助けてくれて、ありがとう」

泣き笑いのような顔で魔王の背中にそう言うと、塔にぽっかり開いている入り口から中へ入っていった。

それを肩越しに振り返って見送る魔王の口元にも笑みが広がる。

「お前を失った私は、剣を取ることしか頭になかった。だが、そうではなく……あの男のように、真っ直ぐにお前のもとに駆けつければ……良かったのだろうな……」

腕から落ちていく黒い砂は、赤茶の乾いた大地にどんどん積もっていく。

ティターニアのいた世界もきっと、このような場所だったに違いない。

そのことを後悔するしかない魔王は、すべてをフェイレイに託すしかなかった。

「必ず辿り着け」

そして“しあわせ”に。

そう願う魔王は、消え去るその瞬間まで穏やかな笑みを湛えていた。




塔に足を踏み入れたフェイレイは、ずっと上を見上げた。

円形の壁に沿って果てしなく続く階段。窓もない塔内部は、ひっそりとした暗闇に包まれ、先は見えなかった。

天にも届く塔だ。一体どこまで続いているのかは分からない。

「……いつかは辿り着く」

上ばかり見ているとかえって落ち込みそうだ。

一段ずつ確実に登っていけばいいのだ。気長に行こう……そう決めて、ガクガク震える足を一歩ずつ、ゆっくりと上げていく。

氷山を越え洞窟を歩き、海を泳いで砂漠を渡ってきたその身体はボロボロだ。

ひやりとする塔の中、階段や壁に手をつきながらフラフラと登っていく。