Faylay~しあわせの魔法

魔王の鋭い瞳が微かに見開かれた。

そして。

魔王はフェイレイの胸倉を掴むと、ダン、と壁に押しやった。

「ふざけたことを言うな。私はリディアーナのためにお前を助けただけだ。これ以上、お前の顔など見たくはない」

ぐっと喉元を押さえられ、フェイレイは苦痛に顔を歪めた。

「だけど……リディルは、あんたを……助けたがってた……だから、一緒に……」

「余計なお世話だ。ここから先は一人で行け。私は私でリディアーナを助ける道を行く」

「魔王……」

首を締め付ける魔王の手首を掴み、歯を食いしばっているフェイレイの目に、サラサラと零れ落ちる砂のようなものが目に映った。

魔王の左手の先から、黒い砂が零れ落ち、乾いた大地の上へ積もっていく。

「……魔王!」

叫ぶフェイレイの視線の先に気づいた魔王は、フェイレイを放し、さっと左手を後ろへ隠した。

「あんた、それ……」

「一緒に行く気はない。さっさと行け」

そう言ってそっぽを向く魔王。

行かないのではなく──行けないのか。フェイレイはそう確信した。だからこんな風にワザと突き放そうとする。

自分の命を削ってまで助けようとしてくれた。リディルが助けたがっていた人はこういう人なのかと、フェイレイは喉の奥を熱くした。

「魔王」

「行け」

魔王はフェイレイに背を向ける。これ以上会話をする気はなさそうだ。