Faylay~しあわせの魔法

しばらくパタパタと飛んでいた蝶だったが、観念したように姿を変えた。長い黒髪に黒いローブを羽織った長身の男性へと。

漆黒の鋭い瞳がフェイレイへ向けられる。

「やっぱ、そうか」

フェイレイは笑みを零す。

「この世界にリディルが連れてきたのは、魔王だけだもんな」

確かにシャンテルやアリア、ランスもいた。だが彼らはきっと、リディルの心の中にある想いの欠片のようなものだ。

実体として存在し、フェイレイに直接力を貸せるのは魔王だけ。

静かに見つめてくるだけで何も話そうとしない魔王に、フェイレイは問う。

「なんで……助けてくれたの?」

更に沈黙を続ける魔王は、ふっと視線を逸らし、塔を見上げた。

「……私も問う。何故あのとき、私に手を伸ばした」

「え、なんでって……」

フェイレイは首を傾げ、光の渦に巻かれていたあのときの状況を思い返す。

「……助けたかった、から」

「ならば私も同じだ。それ以上の理由はない」

抑揚のない声でそう言われ、フェイレイは返す言葉に困る。そんな彼に魔王は鋭い視線を投げた。

「早く行け」

「え、でも……」

「いつまでこんなところに閉じ込めておく気だ。……早く、連れて帰れ」

「じゃあ、一緒に」

フェイレイは魔王に手を差し伸べた。

「一緒にリディルのところへ行こう。そして、一緒に帰ろう」