Faylay~しあわせの魔法

そんなフェイレイの背中を、誰かが強く押し上げた。

驚いて目を開けると、赤い髪を結い上げた女性が、怒りの表情でフェイレイを見ていた。

(──母さん!)

驚いて開けた口から、がぼっと気泡が漏れる。

アリアの赤い唇が動いた。声は聞こえないのだが……シャンテルのときと同じく、何と言っているのかは解った。

『この馬鹿息子! こんなところでへこたれるような、情けない男に育てた覚えはないぞ!』

更に、背中を押される。

今度は金髪碧眼の、優しい笑顔を湛えたランスが現れた。

『フェイ。もう少し、頑張れるな?』

(父さん……)

フェイレイはこくりと頷いた。

(頑張れる。リディルのところに行くんだ!)

ぐっと歯を食いしばり、上を目指す。

『一緒に帰ってくるんだぞ……』

2人の声を聞きながら水を掻き分ける。

光が見える。

細く続く道標が、強く輝く。


「がはっ!」

水の上へ顔を出し、フェイレイは咳き込んだ。

ゴウゴウと唸るような音が響くそこは、高い波が襲い掛かる大海原だった。空を覆う暗雲からは、バラバラと雨が降っている。

「海……」

雨があたたかい。

頬に落ちてくるそれは、まるで涙だ。