Faylay~しあわせの魔法

「……諦めるな」

そう自分に言い聞かせ、硬くなった身体を動かし、ゆっくりと歩き始める。

「蝶、どこに行ったのかな……」

光の先へ飛んでいった蝶を追いかけながら、左手を眺める。

確かに誰かにつかまれた。

一度だけじゃない。シャンテルのもとへ辿り着いたときと、これで三度目だ。

「誰かに助けられてる……」

リディルに?

一瞬だけそう思ったが、違うとすぐに否定した。あれはリディルの手じゃない。では、誰が……?

ゴツゴツとした鍾乳洞を歩いていると、地鳴りがしてきた。

「今度は何だ」

もう何が出てきても驚かない心構えで辺りを見回すと、背後から大量の水が迫ってきた。

「えええー!」

フェイレイは驚きながら走った。

まだ体力が回復しきっていない。もつれる足ではすぐに追いつかれ、激しい水流に飲み込まれてしまった。

足を掬われた後は、どうなっているのかさっぱり分からなかった。

水圧に身体が弄ばれ、上も下も分からない。抗えない力に押し流され、すぐに息も苦しくなる。

水から上がらなければ。

そう思い手足を動かすのだが、水流はフェイレイを逃すまいとしているかのように、物凄い力で絡み付いてくる。

(……駄目だ)

指輪の光が薄れる。

苦しさに思わず目を閉じ、ほんの少し諦めかけた。