Faylay~しあわせの魔法

「う……」

滑落したときに強かに身体を打ちつけ、あちこちに擦り傷が出来、全身がビリビリ傷んだ。そのせいで痛いのか、寒さで痛いのか、良く分からないけれど。

吹き荒れる風にどんどん体温が奪われていく。このままジッとしていると死んでしまう。

ガチガチと鳴る奥歯を噛みしめ、起き上がる。

身体がまだ震えている。

震えているうちは大丈夫だ。

光の灯るシルバーリングに右手を沿え、細く続く光の先を見る。光は落ちてきた崖の向こう側を指していた。そこを目指して登り始める。

氷を掴む指も、踏みしめる足も、もげて落ちてしまいそうだ。

それでも光の指す方へ、リディルのもとへ辿り着きたいと登り続ける。

しかし、どんどん固まっていく筋肉がそれを許さない。

力の入らなくなった手足は氷を掴むことが出来ず、更に下へ滑落していった。

滑り落ちた氷の上で、フェイレイは動けなくなる。

息が細くなり、身体がもう震えない。視界がグラグラしていた。

「寝るな、俺……」

朦朧とする意識の中、光を探す。

吹雪く景色の中に、微かに見える道筋。それも徐々に弱まっていった。


ここは心が支配する世界。

挫ければリディルの心に押しつぶされ、消えてなくなる。

解ってはいるのだが、どうにもこうにも身体が動かない。