Faylay~しあわせの魔法

その声がリディルに届いたのか。

フェイレイを掴んでいた白い手が消え、自由になった。

沈みかけた身体をなんとか動かし、地面に這い上がる。

四つん這いになって咳き込み、息を整えていると……ひゅう、と冷たい風が身体を包み込んだ。

顔を上げると、景色が一変していた。

月明かりの照らす鬱蒼とした森の中から、ビュウビュウ風の吹き荒れる真っ白な氷山へ。

驚きに目を丸くしている間に体温は一瞬にして奪われ、吐く息も凍りつく。オースター島の猛吹雪の中にいるような感じだった。

けれどあのときのように防寒着など着ていないし、精霊たちの温もりもない。

動かないと凍死する。

フェイレイは立ち上がり、身を縮め、腕をさすりながら歩き出した。指輪から伸びる細い光は、吹雪の向こうに続いている。

「ここも……リディルの創った世界?」

青白く尖る山々は硬い氷に覆われ、絶えず吹く風が肌を突き刺す。

生命の息吹を根こそぎ奪い去っていく過酷な世界。身も心も凍ってしまうような、こんな夢を見ていたのだろうか。

それとも何か、リディルの心を表す世界なのか。

良く分からないままに見上げた空は、吹雪で何も見えなかった。

太陽の光すら届かない、永久凍土。

ぬくもりのない世界は、一歩歩くごとに気力をも奪い去った。

斜面に足を取られ、数十メートル滑落する。

いつもなら踏ん張りのきくはずの足が、寒さのために感覚を失い、動かななくなっていた。