Faylay~しあわせの魔法

暗い、暗い底なし沼に引きずり込まれる。

そう思い、ふと、このような体験をしたことがなかったか……軽い既視感にとらわれた。

何故なのか。

昔、暗い底なし沼に引きずり込まれるようなことがあったような──。

(……リディルだ!)

見えない力に底なし沼に引きずり込まれる。そんな夢を見ていたのはリディルだ。

良く分からない。何だか怖い。

そう言って真夜中に、大木の下で泣いていたではないか。

(リディルの創った世界……)

確かにその通りなのだ。

これはリディルの心で出来た世界なのだ。そのことがようやく理解出来た。

誰もいない鬱蒼とした森の中を彷徨い、魔物に襲われ、そして底なし沼に引きずり込まれる。確かに幼い少女が見るには恐ろしい悪夢だ。

「……大丈夫だ」

フェイレイは沈んだ手を、なんとか泥水の上に出す。

「怖くない。泣かなくていいんだ」

頭の半分は泥水に沈み、もうすぐすべてが埋まる。それでもフェイレイはリディルに語りかけた。

「俺がずっと、傍にいる」


『ずっとずっと、護ってあげるからね』


幼い頃に言ったのと同じように、そっと、優しく語り掛ける。