Faylay~しあわせの魔法

「あの、さっき助けてくれたの、リディルのお母さんですか?」

そう訊いてみるものの、シャンテルはただ穏やかに微笑むだけで何も答えなかった。

そしてまた、彼女は白い霧に覆われていく。

──消えてしまう。

そう思い、咄嗟に叫ぶ。

「必ず、リディルを助けます!」

シャンテルの笑顔は白い霧にすっかり消えてしまった。すると足元の地面が抜けて、また闇の中に放り出されそうになる。

フェイレイは飛び上がって地面に戻ると、細い光の指し示す方向へと走っていった。



ホウ、ホウ、と梟の鳴く暗い森。

空を見上げると、背の高い木々の葉の影が、月明かりに縁取られてはっきりと見えた。

「今度は森の中……」

天から差し込む明かりのおかげで、夜闇の中でもだいぶ目が利く。

手入れのされていない、自然のまま残された森のようだった。柔らかい土の感触は、アライエル王城の北の森を思い出す。

少し肌寒い森の中を、光の指し示すままにずっと歩いていくと、ガサリ、と背後の木々が揺れた。

(……何か、いる?)

立ち止まらず、振り返らず、歩きながら気配を感じ取る。

ガサリ。

今度は左側の木々が揺れた。

(……気配がない)

ガサリ、ガサリ。

音だけが不気味に響き、まったく気配がないままに距離を詰めてくる。