「っ、リディル!」

闇の中から何かを掴もうと手を伸ばすと、ぱしん、と誰かに手を掴まれたような気がした。

不思議に思う間もなく、ぐん、と身体が浮き上がり、再びモヤモヤと渦を巻く闇の中に放り出される。けれど状況は変わらない。

精霊王の力が尽きた。

細い光の道標も見えない。

けれど自分で進まなくては。

互いの絆を信じて進め。精霊王はそう言った。

辿り着けるはずだ。

リディルを想う心だけは、誰にも負けないのだから。


歯を食いしばり、足を動かす。

すべてを拒絶する世界。そこまで続く道もまた、侵入者を拒絶するように見えない力で押し返してくる。

その闇を切り裂くように身体を前に進め、渦巻く風の向こう側へと手を伸ばす。

するとまた、手を掴まれた。

ぐん、と前のめりに身体が傾き、咄嗟に出した足裏に固い感触が伝わる。気づいたらほの明るい、白い霧の漂う空間に出ていた。

「……ここは?」

踏みしめる大地から、さく、と軽い音が響く。草原の短い草の上を歩く感触だ。

さくさくと音を立てながら歩いていくと、ゴトン、ゴトン、と水車の回る音、そして水の流れる音が聞こえてきた。

「まさか、バアちゃんのとこ!?」

戻ってきてしまったのか、と一瞬焦ったフェイレイの前に人影が現れた。