Faylay~しあわせの魔法

彼の娘を想う心に触れ、フェイレイは何度も頷いた。

「俺、あんたの言葉、伝えに行く。だからリディルのとこに行く方法、教えてくれないか」

ほう、と精霊王が長い溜息をつき、大きな瞳が、弓なりに細くなった。

《……今度こそ……しあわせに……》

「うん、しあわせにする」

《やはり、お前に託したのは間違いではなかった……》

精霊王は微かに笑みを浮かべ、ゆっくりと息をつきながらフェイレイを見た。

《お前……リディアーナと揃いの物を持っているな》

「え? ああ、これのこと?」

フェイレイは左手の小指に嵌めたシルバーリングを精霊王に見せる。

《ああ。それにはお前たちの、想いが込められている。迷い森の中で、道を指し示してくれるだろう》

「迷い森?」

確かハルカもそんなことを言っていたな、とフェイレイは思い返す。

《リディアーナが創り上げた世界だ……。良いか、『勇者』よ……これより先は、試練の道。ティターニア……リディアーナが創り上げた世界を旅することになる》

「……うん」

《それはリディアーナの“心”が創り上げた世界。すべてを拒絶したその世界を歩くことは困難。……私はそこまでの道を創ることは出来るが、そこから先はお前の心だけが頼りだ》

「……心が大事なのか?」

《そうだ。心の世界を旅するには、心の強さが必要なのだ。少しでも挫ければ、そこでお前の命はリディアーナの心に押しつぶされ、消えてしまうだろう。つまりそれは、死を意味する》

精霊王はジッとフェイレイを見つめた。

《それでも、行くか》