Faylay~しあわせの魔法

ナミのテントを出たところで、通信機が鳴る。

「はい?」

応答すると、ローズマリーの声が聞こえてきた。

フェイレイは短い草の上の腰を下ろし、通信機を石の上に乗せ、映像通信に切り替えた。

『その様子では、怪我はすっかり良いみたいですわね』

宙に浮かび上がる小さな画面の中で、ローズマリーは微笑む。

「はい。惑星王のお加減はいかがですか?」

『ご心配ありがとう。カインの回復も順調ですよ。それで今日は、カインが貴方と話をしたいとおっしゃるので繋ぎました』

「ええっ!」

いきなりそう言われ、心の準備が整う間も無くローズマリーの姿が消える。

そして紺色の髪の、やせ細った青年の顔が映し出された。

『惑星王、カイン=アルウェル=ユグドラシェル皇帝陛下でございますよ』

そうローズマリーの声がして、フェイレイは地面に額をこすり付ける勢いで頭を下げた。ヴァンガード、タウも同様である。

そんな畏まった様子のフェイレイたちに、カインは柔らかな笑みを浮かべる。

『こんにちは、フェイレイ=グリフィノー。話はローズから聞いているよ』

親しみの篭った声に、フェイレイは思わず顔を上げた。目と目が合い、またパッと頭を下げる。

『今私は病床にいる。惑星王としてではなく、一人の人間として話してもらって構わない』

その言葉に、いいのかなと思いつつ、そろそろと頭を上げる。

魔王に身体を乗っ取られていた頃とは別人のように、優しい紫暗色の瞳をしていた。

ああ、この人が惑星王なのか、と改めてカインの顔を眺める。

『あまり長く話していられないので、さっそく本題に入らせてもらうけど……君は魔族との抗争を終わらせたいそうだね』

「……はい」

フェイレイがこの二ヶ月、ローズマリーに相談していたのはそのことだった。

魔族との戦いを終わらせる話し合いをするには、人の王である惑星王の声が必要不可欠だからだ。