「リディルを見つけるには死んだら駄目だってさ。精霊たちが教えてくれた。俺、頑張って生きないと。生きて、魔族たちを説得しないと」

「あんな目に遭って、まだそんなことを言うんですか! 信じられません!」

ヴァンガードは怒って立ち上がり、ドスドス足音を鳴らしてドアまで歩いていく。

「だってさ」

その背中に向かってフェイレイが話し出す。

「リディルのところには魔王もいるんだ。魔王に、もう安心しろよって、言いたくないか?」

ヴァンガードは足を止め、俯いた。

「……貴方と話してると、血管が切れそうですよ、もう!」

ガラリとスライド式のドアを開けたヴァンガードは、叩き付けるようにドアを閉めて出て行った。

「……怒らせたかな」

それとも心配させてしまったか。

フェイレイは心の中でヴァンガードに謝った。

「でも、もう……何も知らないで戦うのは、嫌だよな……」

相手が何を考え、どうして挑んでくるのか。

知っていれば避けられた戦いがたくさんあった。奪わなくていい命すら奪ってしまった。

そんなのはもう嫌なのだ。

戦いの中で様々な想いに触れたフェイレイだからこそ感じるものである。


軽く息をついてゴロリと寝返りを打ち、身体の痛みに顔を顰めると。

「お前のような馬鹿な人間もいるのだということ、覚えておく。驕りがあったのは、こちらも同じことだ……」

窓の向こうからそう声が聞こえた。

慌てて身体を起こして窓の外を見やると、黒い羽根が一枚、ひらりと舞っていた。

それは瞬きをする間に、すうっと消えていった。