「……ごめんな。俺のために、出てきてくれた、んだな……」

消えていく光をぼんやりと見つめながら呟く。

《フェイレイ、生きなさい》

ぱちん、と弾けながら精霊たちは言葉を残す。

《リディルを助けられるのは、貴方だけ。人間は私たちと違って輪廻転生する。死んだらもう、“貴方”がリディルに逢うことはできないよ》

「……そうか」

フェイレイは微かに笑みを浮かべた。

「この世界にはない場所……もしかしたら、死んだら行けるかなって、ちょっと、思った、けど……」

フェイレイの身体が地面に崩れ落ちる。

「フェイレイさん……!」

ヴァンガードとタウの声が遥か遠くへ飛んでいく。



次に目を覚ましたときには、白い壁と天井の病室にいた。

「……生きてる?」

ぼうっとしながら両手を動かし、ギュッと手を握り締めてみる。身体は鉛のように重いが、ちゃんと動くようだ。

「良かった……」

「良かった、じゃありませんよ!!」

突然横から怒鳴られ、フェイレイは一気に目が覚めた。

「本当にやめてくださいね! 貴方はリディルさんを助けに行くんだって言ってるでしょう!」

怒り狂った表情のヴァンガードが、ベッドの横に座りながら怒鳴っていた。

「いや、うん。……死ぬつもりは、ないんだけど……魔族たちの気持ちを考えると、ああするしかないのかな、と思って」

「それで死んだらどうするんですか!」

「なんとかなるかな、と」

「なるわけないじゃないですか!」

「なんとかなったよ」

フェイレイは右手を布団から出し、ヒラヒラと振って見せた。