Faylay~しあわせの魔法

湖を囲むように建つ家々は、星府軍の攻撃を免れたらしく、今もひっそりと佇んでいた。

ランスがいた小屋を覗いてみると、あの日のままずっと放置されているようで、暖炉には灰が積もり、床には使っていた寝具が敷かれたままになっていた。

明かりもなく、しんと静まり返った部屋の中を見ていると、涙が込み上げてくる。

それをぐっと堪え、外に出るとヴァンガードが駆け寄ってきた。

「フェイレイさん、あの家の方が、ランスさんの遺骨を預かっていると……」

彼が指差した先には体格のいい老人がいた。

老人はランスの小屋の隣に住んでいて、フェイレイたちを家の中へ招き入れ、白い陶器の骨壷を渡した。

「この人は、星府軍のお偉いさんと戦って、湖の上で亡くなったよ。もし家族がいるのなら渡さなにゃならんとと思って、埋葬せずに取っておいた」

骨壷を両手で受け取り、フェイレイは頭を下げた。

「ありがとうございます」

「……いい人だったのになぁ」

老人はランスの死を惜しむように、長い髭をゆっくりと撫でた。

その一言だけで、フェイレイは十分嬉しかった。

「……ありがとうございます」

もう一度礼を言い、タウの待つ飛行艇に戻る。

ランスの姿にタウは驚いたようだったが、すぐに飛行艇をセルティアへ向けてくれた。

「支部長と一緒に埋葬してあげるといい」

「はい」


飛行艇は何度か給油をしに陸へ立ち寄り、2日かけてセルティアへと戻った。