「……ティターニアは、リディルと同じ……自分の意志で哀しみの塔に閉じこもった、ってことか?」

フェイレイが眉間に皺を寄せる。

「何のために?」

ブラッディはヴァンガードへ視線をやる。

「それは、魔王と勇者……人間たちとの戦いをやめさせるため……ではないのですか?」

ヴァンガードはまたフェイレイへ視線をやる。

「そうかもな。でも……ティターニアはどうやってリディルになったんだ?」

フェイレイはブラッディへ視線をやる。

「そんなこと俺が知るか。……でも、だとすると『勇者伝説』は真実ということなのか?」

全員が首を傾げる。

「……よく分かんないけど、とにかくその『哀しみの塔』を見つけ出さなきゃいけないんだ」

精霊たちの言葉が本当なら、リディルはきっとそこにいる。ティターニアがずっと孤独に過ごした『哀しみの塔』に。

その情報が手に入れられるかもしれない場所が見えてきた。

湾に入り、波が少し穏やかになったその向こう。

ヴァルトの港が見えてきた。


港は人々に溢れていた。

アライエルの青い国旗や横断幕を掲げ、『勇者』の無事の帰還を祝って歓声を上げている。船が入港すると花火がいくつも青空に上がった。

「……凄いことになってる」

「貴方、『勇者』ですからね」

船縁から港を眺め、フェイレイは戸惑いの笑みを浮かべた。