フェイレイはひとりでも何とか出来るだろうが、リディルは助けなければと視線を走らせると。

リディルは黒い霧に手足を囚われていた。

「リディルさん!」

ヴァンガードが叫ぶと、リディルは一瞬だけ彼らを見て、そして微笑んだ。

駆け寄ろうとすると、目の前に崩れた天井の塊が落ちてきて道を塞いでしまった。

「リディルさん──!」



崩れ落ちる瓦礫の音に混じって聞こえてくるヴァンガードの声を耳に入れながら、リディルは黒い霧に手を伸ばした。

白い光がゆるやかに霧の中に溶け込んでいく。その光はどこまでも優しく輝いていた。

『ティ、ターニア……』

身体に巻きついてくる黒い霧を、そっと抱きしめる。

「……もう、ひとりにしないよ」



一緒にいこう。

リディルは微笑みながら目を閉じた。