Faylay~しあわせの魔法

「……そんな」

フェイレイは愕然とする。

幼い頃から憧れ続けてきた『勇者』の真実が、世界を滅ぼそうとした悪魔だというのか。

にわかには信じられず、背後にいるランスロットへ意識を向けた。

『そう。だから対外的には世界を滅ぼそうとしてティターニアを攫ったのは魔王とされ、精霊王と私は正義のために散ったということになったんだよ。形ばかりの像を作り『勇者』の功績を称え、そしてセルティアにいた私の家族に、形ばかりの栄誉を与え、真実を闇に葬った』

だから魔王はアライエルを世界のどの国よりも憎んでいた。

ランスロットの本性を見抜くことなく騎士団長として迎え入れ、そして彼が世界を手に入れようと動き出してからは、自分たちの保身のために真実を捻じ曲げた。

魔族を恐れていた人々にとっては、その嘘の方が真実として受け入れやすかっただろう。

自分たちの同朋が、闇に蠢く正体不明の恐ろしいものを倒してくれた。その真実の方が。

「だけど、あんたはアライエルでは笑顔だった! 辛い過去を持ちながらも、ティターニアに助けられて、彼女に感謝しながら生きていたじゃないか!」

『それは真実だよ』

ランスロットは柔らかく笑った。

『彼女に助けられ、彼女に世界を与えてもらった。……この世界に復讐するために生きる世界をね』

「ランスロット!」

魔王の腕の中から、リディルが叫ぶ。

「ティターニアは決して、貴方をそんな道に進ませたかったんじゃない! 貴方は人を助けられる人になれる。そう、信じてた!」

『……信じるって、何だろうね』

ぐっと、更に剣が押し込まれる。魔王ですら抑えきれないほどの力だった。

『彼女は私の何を知り、何を信じていたのだろう。その身を滅ぼしてまで』