Faylay~しあわせの魔法

「なんでティターニアをっ……」

更に魔王との戦闘は激化していく。

剣を交わらせる互いの身体からは血が噴出し、飛び散る覇気で周りの壁を次々に破壊していく。

意に反して鋭さを増していく剣は、確実に魔王を追い込み、一瞬の隙をついてその喉元に切っ先を向けた。

そこに白い光が割って入る。

フェイレイの剣の先を受け止めた白い光の内側には、鋭い瞳をしたリディルがいた。両手を前に突き出し、壁を作って魔王を護っている。

『けれど、彼女は駄目だ』

ランスロットは溜息交じりに言う。

『記憶を取り戻したおかげで、私のことも思い出してしまった。だからもう、邪魔なだけなんだ』

「なんだと……?」

『さあ、フェイレイ』

その声に、フェイレイの身体の奥から更に力が込み上げてくる。

白い光の壁に突き刺さった剣は、徐々にその壁に食い込んでいく。

『一思いにやった方が、楽に死なせてやれるよ』

「駄目だっ……なんであんたがこんなことをっ……『勇者』のあんたが!!」

『フフ、その思い込みも役に立ったよ。『勇者』が世界を救った英雄……そんな嘘を、アライエルが世界中に流してくれたおかげでね』

「……なんだって?」

ぐぐっと食い込んでくる剣に、リディルの顔が苦悶に満ちる。

「リディルっ!」

フェイレイは何とか身体を止めようと必死にもがくが、やはりどうにもならない。

そんな彼の代わりに助けに入ったのは魔王だった。

彼はリディルを後ろから抱きしめ、フェイレイの剣を押し返す。

「まだ分からないか。アライエルは自国の保身のために、世界を滅ぼそうとした悪魔を『勇者』と偽ったのだ。自国が生み出した騎士団長が、精霊王とその娘を消したなど世界に知れれば、その権威は地に落ちるからな」